ペーター・シュミードル(Cl)&佐々木秋子(Pf)デュオアーベント

「モーストリー・クラシックス2008年10月号」より

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ペーター・シュミードル(Cl)&佐々木秋子(Pf)デュオアーベント

「モーストリー・クラシックス2008年10月号」より

Schmidl 4846339.jpgウィーン・フィル首席クラリネット奏者で、2007年からはPMF芸術主幹も勤めているペーター・シュミードル。
今年のPMF終了後、日墺文化協会が主催した演奏会では、近年活躍が著しいピアニストの佐々木秋子との共演。総じて、やわらかい優しさと、深い簡潔に満ちた、楷書体の名演を聴かせてくれた。
前半の3曲 (シューマンの「幻想小曲集」、 ブゾーニ の「エレジー」、ウェーバー の「シルヴァーナ」変奏曲)は、PMFの疲れからか、シュミードルの音色と音程に時折不安がみられたが、後半の2曲では集中力と精度が一転。
ブラームスのクラリネット・ソナタ第2番と、ウェーバーの協奏的大二重奏曲における、いきいきと澄んだ音色とユーモアに満ちあふれた音楽性が紡ぎだす感動は全身的だった。
しかし、当夜の白眉は何と言っても佐々木秋子のピアノ。
各作品を深く味わい知りぬいた、聡明でしなやかな語り口からは、室内楽における伴奏の大切さを改めて教えられた。

渡辺謙太郎・音楽ライター