マンデルリング・クァルテット&佐々木秋子(p)/演奏会Reviews
「モーストリークラシック」2008年11月号 掲載
9月15日 東京国立博物館 平成大講堂,上野
今回が初来日となるドイツ出身の当団と、ピアニストの佐々木秋子が共演した注目公演。
今年結成25周年を迎える当団は、ヴァイオリンの2人とチェロが兄弟関係にあり、欧米の主要音楽祭などで名声を積み上げている実力派。
モチーフの分節や繋ぎを、各楽器の精緻な受け渡しで紡いだシューベルトの《ロザムンデ》に続き、この日の白眉だったのがショスタコーヴィチの第8番。
まるでもつれた糸のように複雑に絡み合った声部で編まれた難曲を、彼らは一点の曇りもなく完璧に処理しながら、爽やかで清々しい音楽として描いてみせる。
メンバー全員が近くに暮らし、長時間をかけて緊密なアンサンブルを育んでいるという彼らだが、果たしてその言葉通り、成熟した均衡と、多用な展開を聴かせてくれた。
後半、佐々木が加わったブラームスのピアノ五重奏曲では、舵取りを名手佐々木に委ね、ダイナミックで迫真に溢れた演奏を展開。美しい叙情性も兼ね備えた秀演だった。
渡辺謙太郎(音楽ライター)