ペーター・シュミードルとムジツィーレン!

音楽の友 2008年10月号
RONDO(今月のロンド)

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ペーター・シュミードルとムジツィーレン!

音楽の友 2008年10月号
RONDO(今月のロンド)

ウィーンの香りに包まれた、最高の室内楽の夕べ

Schmidl Kammer 8.jpgウィーン・フィルの首席クラリネット奏者として、わが国でもファンが多い名手ペーター・シュミードル。
2007年からはPMF芸術主幹も勤める彼は、今年のPMF終了後、神楽坂の音楽の友ホールで、近年活躍が著しいピアニストの佐々木秋子
や、N響チェリストの村井将らと室内楽の夕べを行った。
シュミードルと佐々木は、前日にも渋谷のHakujuHallで見事な演奏を聴かせてくれたが、この夜はそれをさらに上回る素晴らしい内容。
それは「室内楽のお手本」と言うべき、筆者にとって今年最高の演奏会のひとつになるであろう、深い感銘に満ちた名演だった。
プログラムは、シュミードルと佐々木が弾くシューマンの《幻想小曲集》とウェーバーの《ジルヴァーナ》変奏曲、村井と佐々木が弾くシューマンの《アダージョとアレグロ》。そして3人が弾くベートーヴェンの《街の歌》とブラームスの《クラリネット三重奏曲》という豪華なラインアップ。
持ち前の柔らかい音色とのびやかなテンポで演奏をリードするシュミードルの至芸は、年を重ねた現在も相変わらず流石だったが、それに寸分も遅れず、明晰な楷書体のアンサンブルを形成する村井と佐々木の方に、筆者の耳と心はずっと傾きっ放しだった。
その意味で、トリオ2曲とならぶ当夜のハイライトは、清冽と、豊穣と、静寂がバランスした村井と佐々木のシューマン。
このデュオの継続と成熟を心から願ってやまない。そんな夜だった。

(7月31日音楽の友ホール)